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カルチャースタディーズ研究所は
社会デザイン研究者の
三浦 展が主宰する、
消費・文化・都市研究のための
シンクタンクです。

カルチャースタディーズ 30代インタビュー 第1回

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株式会社夏水組 代表取締役 坂田夏水さん
リノベーションを中心とする各種インテリアデザインを手がける夏水組の、若く美しい社長が坂田夏水さんだ。シェアハウス専門の不動産会社、こひつじ不動産も手がける。7月には家具のリメイクをテーマにした『夏水組のパリ風手作りインテリア』(メディアファクトリー)も出版。いま最も注目される30代の一人だ。

三浦:それ、正社員なの?

坂田:正社員。だけど、好きにやらせてあげるよ、って。

三浦:工務店で好きなようにやる、ってどういうこと? 素材選びとかを、安くていい感じのを選んで、利益を出すとか?

坂田:自分で最初にお客さんを見つけてくるんですよ。で、まわりの不動産屋さんとか、自分が気になっている不動産屋さんにアポイントをとって、「私、こういうのをやりたいんだけど」みたいなのを言うんですよね。そうすると、「まぁいいよ、じゃあ、見積もりに参加させてあげるよ」とか、おじさんが言って。

三浦:ちなみに、あなたは、どんなのをやりたいって、不動産屋さんに言ったの?

坂田:たとえば、管理物件をたくさん持っている代官山の不動産屋さんとかがあって、原状回復っていうの、あるじゃないですか。それをたくさんやっているわけですよ。そのなかで、普通の原状回復じゃなくて、 ちょっと私にやらせてくれませんか、一戸だけ、みたいな。 普通は、賃貸で、だいたいクロスと床とキッチンとか、やりかえたりするんですよ。10年くらいたったら。そういうのを、不動産業界では、「原状回復」って言うんですけど。それを、ちょっと割高になるけど、「私、こういうの、やりたいんですよね」って言ったら、「いいよ、やらせてあげ るよ」みたいな。結構ね、今から考えると、だいぶがっついてがんばってたな(笑)。

三浦:いいっすねえ。

坂田:とにかく2年間、頭にタオルを巻いて、鼻クソが真っ黒の期間を過ごしていたんですよ。そうしたら、理解できるようになった。働いて、汚くなることが。だから、爪の中が真っ黒な人とか見ても、「あ、がんばってんだな」って思う。女の子が汚くても、「あ、がんばってんだな」っていう見方をしちゃう。自分が現場から帰るとき、車で移動しているときは汚くてもいいんだけど、どうしても電車で帰らなくちゃいけないときとか、真っ黒で、実はインパクトを――インパクトっていうのは、簡単に言うと電動ドライバーですね――バッグの中に入れて帰ったりするんですよ。

三浦:普通のバッグに?

坂田:そうそう。普通っていっても、そのときは現場監督だったから、 きれいなバッグでなくて、トートバッグとかそういうのなんだけど、あけたら、やばい工具が中に入ってる、みたいな。

三浦:危ないなぁ。警察官に呼び止められたら大変(笑)。

坂田:そう。そのときは、すごい運動もするし、筋肉もムキっとしてて、体型もなかなかよかったんだけれども。まぁ、その工務店時代を激しく過したわけですよ。激しく、激しく。

三浦:工務店の後は不動産屋に転職したんでしょ?

坂田:はい。女の子しかいないという不動産屋なんですけど、すごい会社だったんですよ。もともと、そこからリノベの工事の仕事を受けていたんですが、そのときに初めて、シェアハウスをつくって、シェアハウスのリノベーションしてたんですね。ここの女の子が仕入れてきた借地権の再建築不可っていうのがあって、その加工方法を見つけないと、転売できない。それを加工するために私は工事監理に入っていて。で、一緒にやっているうちに、ちょっと不動産って面白いなと思って、やっぱりピラミッドのいちばん上が不動産屋さんなんだっていうのを実感しました。で、それで、その不動産屋に半年間いたんですよ。

三浦:半年だけ?

坂田:半年で辞めたのは、会社が潰れたから辞めたんです。

三浦:え、なんで潰れたの?

坂田:全盛期から、サブプライムのいちばん最初の波にのまれて。

三浦:じゃあ、2008年の前半だけいたの?

坂田:そうなんです。その頃は四苦八苦でした。いろんな人が乗り込んできたりとか、業者さんが何人も連れて、払ってくれないと帰しません、とか(笑)。ナニワ金融業的な。

三浦:(笑)

坂田:会社の終わりがだいたい見えてくると、お付き合いしている業者さんがみんなでくるんですよ。資産をとにかく自分が先に取らないと、というので、取り立てするんですよ。私は自分から発注をかけるというのはなかったんですけど、やっぱり、営業担当の女の子たちは、契約したりしているわけじゃないですか。決済が済んでいない物件だけど、契約済のものもあって、不動産屋のおじさんに問いただされるんですよね。 見ていて、可哀そうだなと思ったけれど、不動産屋さんで調子よく仕事をしていると、こういうのが待ってるんだなっていうね、恐い世界を見てしまいました。すごかった。

新しいものよりボロいものが好きだったから

三浦:リノベーション自体は、いつ関心を持ったんですか?

坂田:リノベーションは、工務店からですよ。

三浦:そうなの? それまでは別にリノベーション、とくに関心があったわけじゃないんだ?

坂田:そう。完全に新築だったの。

三浦:たまたま、ハローワークで見つけた工務店がリノベだったの?  そこで目覚めたの?

坂田:ですね。でも、まぁ、大学のころから、リノベーションはいいなと思っていましたが。

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