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カルチャースタディーズ研究所は
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三浦 展が主宰する、
消費・文化・都市研究のための
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カルチャースタディーズ 30代インタビュー 第2回

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建築家 らいおん建築事務所 主宰 嶋田洋平さん

リノベーション開始

三浦:で、2008年に独立して。リノベーションとかはもう、みかんぐみ時代にも関心があって?

嶋田:はい、担当していました。いちばん最初にリノベーションにかかわったのは、高尾山にある「四季の桜」というお土産物屋さんです。ケーブルカー乗り場の手前に、古い昭和の、たぶん戦前から建っているような長屋のお土産物屋さんがありまして、そこのいちばん手前側の店舗のオーナーさんが、隣と全然違う店にしたい、と(笑)。いわゆる店先で売っているお土産物屋さんが7軒くらい並んでいる中です。

三浦:それは、オーナーがそう言ってきたの?

嶋田:はい。その店は高尾山のお土産物屋さんなのに、高尾山のものはあまり売っていないんです。店主が、全国のいろんな面白いところに行っては、おいしいものを買ってきたりして売る、と。おつまみとか珍味とか。

三浦:なんだそれ(笑)。

嶋田:で、そういうのを売っていますと、すごく売れるんですって。でも、そうすると、すぐに隣のお店がまねてしまう。せっかく自分が苦労して商材を見つけてきたのに。だから、全然真似できないような、独自ブランドみたいな感じで売り出したほうがいいんじゃないか、と、あるとき、店主、思いついちゃったんでしょうね。

三浦:へえ。

嶋田:そんなある日、店主は新聞広告で、「電通デザインタンク」というのを目にしたんです。当時、電通がクリエイティブ、営業、組織が縦割りになっているところを、うまく横につないで、デザインでいろんな物事を解決していくための部署をつくります、と。それで、さまざまな企業のお手伝いします、っていうのが出ていたんで、高尾山の、この小さなお土産物屋の店主は電話したんですって。

三浦:電通に?

嶋田:そう。そうしたら、「やります」って言ったらしくて。当時、トヨタグループ館などの仕事でおつきあいのあった電通さんが、みかんぐみを紹介してくれて、やることになったんですね。

>四季の桜/みかんぐみウェブサイトより

三浦:高尾山らしからぬ。

嶋田:通りがあって、この先にケーブルカー乗り場があるんですけれど。この写真の建物の後ろに小川が流れているんですよ。昔の商店街みたいに店先で売っていて、奥に座敷というか、ちょっと上がっていて、そこと2階が生活の場所になっていて、暮らしていたんでしょうね。あがらせてもらったら、大変に気持ちのよいところで、ぶち抜いて、奥までお客さん入れたらいいじゃないでしょうか。とご提案しました。軒先で商売するのをやめて、ちゃんと扉をつくって、中で食べたり、買えたりっていうスペースにしましょうと。

三浦:職住が一緒なの?

嶋田:昔はそうでしたが、今は違います。でも以前の名残が空間にあって。改修後、昔からの、ある客層は失ったらしいんですけれど、若い人たちに爆発的な人気が出まして。いま、高尾山そのものが人気じゃないですか。売り上げが年々上がっているそうです。
大きいのは上野ビルディングですね。神田駅前に築40年くらいの鉄骨鉄筋コンクリート造のオフィスビルがありまして、耐震診断したら耐震性能に問題があることがわかりました。当時は、姉歯事件の問題があって、損害保険会社は耐震性の低いビルには極力入居しないようにという行政からの指導があったようで保険会社がごっそりと出ていってしまいました。3階から6階くらいまでを借りていたテナントが撤退です。

三浦:あぁ、それで、あの金融機関のビルが空いているんだ。東日本橋あたりも空いているよね。

嶋田:そうでしょうね。それで、出ちゃったからどうしようかということで、オーナーさんは、耐震改修をしようと決意されて、最初ゼネコンに相談していたらしいんです。だけど、痛々しい補強のアイデアしか出てこないし、貸し床の面積減ってしまうし。ということで、知り合いの環境エンジニアリングという設備設計事務所に相談したところ、そこからみかんぐみに話が来まして、構造設計事務所の金箱構造設計事務所と三社でチームとして取り組みました。
これは、1階、2階、地下1階にみずほ銀行はそのまま入ったまま、耐震改修の工事をやって。3、4カ月くらい、工事をやってたかなぁ。

三浦:これ、神田の駅のすぐ向こうでしょ?

嶋田:そうです。

三浦:あぁ、あれが一番最初なの。

嶋田:そうです。大変でしたけれど、新築同様の家賃になれたらしく。

三浦:へぇ。

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