カルチャースタディーズ 30代インタビュー 第2回
- 建築家 らいおん建築事務所 主宰 嶋田洋平さん
嶋田:山形R不動産のある物件のことを聞いて面白かったんです。大学が民間とやるプロジェクトができたので、大学でちょっとお金を貸してもらえませんかって言ったら、大学からは体よく断られて、山形銀行かなんかを紹介してくれたんですって。もともと、花街みたいな、いや違った、民宿をリノベーションするんですけど、それを学生向けのアパートかなんかに。
三浦:旅館だよ。
嶋田:旅館だ。それで、学生に「ここに住みたい?」って聞いたら、「住みたいです!」って言うんですって。「いくらだったら住む?」って言うと、「○万円くらいだったら住みます」って。「じゃあ、○万円で住む人、10人集めてきて」って言ったら、何日かして、「集めました!」って。
三浦:(笑)。
嶋田:それを、最初に銀行に行ったときに、「こうこう、こういうプロジェクトがあって」と言うと、けげんな顔をされるんですけど、「実は、もう入りたいっていう人が10人いるんですよね」と言うと、「えっ、いくら貸せばいいですか?」みたいな感じになったらしいんですよ。最初に入居者をあらかじめ決めておくと、お金貸してくれるよ、っていうのを正直に再現したと言いますか(笑)
三浦:なるほど。
嶋田:最終的には、オーナーさんの自己資金でやったんですけが、リスクを最小限にするという意味では、そういうやり方をメルカート三番街でも、この間、見ていただいたポポラート三番街でも、通しました。
三浦:なるほどね。残念ながら最近火災の被害にあってしまいましたよね?
嶋田:そうなんです。12月18日に、隣家の木造家屋から出火した火災がメルカート三番街の水玉食堂という飲食店に延焼し、一部火災被害に遭いました。消火放水と作動したスプリンクラーの散水によって、全10店舗が被災してしまいました。
三浦:営業はどうなってしまうの?
嶋田:火災翌日にオーナーや僕も含めて入居者全員で集まって、今回、残念な事が起こったけれど、全員一丸となって復興に向けて頑張ろうと、確認しました。その後は各店舗のお客さんや地元の若い人達のコミュニティ、大学の学生等ががれき処理や片付け等を手伝ってくれ、すごいスピードで復興計画が進んでいます。できれば予定されている来年3月の第4回リノベーションスクール@北九州に間に合うように各店舗を再開できればと思っています。
三浦:では、今後はどんな展開を?
嶋田:今後は、いま、中屋興産ビルで、梯さんという一人のオーナーさんやってきたような事を、横の展開にしていきたいと思っています。そのために作ったのが北九州家守舎です。中屋ビルは北九州の小倉の家守構想のパイロット的プロジェクトみたいになっています。そんな中、前述の清水さんや九州工業大学准教授の徳田光弘さんらと、リノベーションスクールというのをやっていて、魚町エリアにある、膨大な空き物件をいくつかピックアップして、リノベーションの事業の組み立てとオーナーへと提案を一般参加者と一緒に行うという。
三浦:とりあえず小倉で、町全体をリノベーションするのを成功させたい、ということ?
嶋田:そうですね。地方の中心市街地が抱えている、どこも抱えている問題に一つの答えを示せるかもしれないと思っています。言葉は悪いんですが、商店街って、補助金に頼りすぎてきました。それが、実はあまりうまくいっていないこともわかってきました。そういう時だからこそ、僕は、町なんだから、町でどれだけ張りたいか、どれだけ張れるかが、町の価値じゃないですかと言いたいです。この町だったらやってみたいよって、そう思えるようにするには、張れる町にしなきゃならなくて、場がもりあがらないとそうはならないですよね。そのためには、誰かリスクをとって事業を始めないといけない。たぶん、梯さんっていうオーナーは、最初に身を挺してやったんだと思うんです。小倉のような町で。それは結構、まわりの人たちに衝撃を与えたと思うんですけが、そういう人がいっぱい出てくるためにも、僕ら、北九州家守舎は人をつなぐ役割とオーナーさんの伴走者としてお手伝いしたいと思います。そうしてなんとか、小倉は滅亡を避けられるかな、と思います。昔みたいにはならないと思いますけれど、滅亡してしまった他の商店街とは違う、縮小して、均衡して、生き延びられる道が、小倉にあるかもしれないな、と。
三浦:まだ、相当元気だもんね。本当にシャッター通りになってからは、再生するのはなかなか難しいけれど。
嶋田:梯さんは危機感をもっていて、ほっとけば、10年くらいすれば、なくなっちゃうよ、って言っているんですよ。そうなってほしくない人がいて、求められているときは、お手伝いしたほうがいいかな、と思います。
三浦:10年足らずでうまくいくんじゃないですか。
嶋田:いくんですかね。
三浦:R不動産も、セントラルイーストもこの10年で、これだけ広がった。10年すれば、これが普通だろ、みたいになる。
嶋田:僕よりももっともっと若い人たちが頑張ればいいと思いますけどね、商店街で。
(おわり)